2018年に実施したクラウドファンディングのリターンの1つ「レンタル志学」(事務局長の森分をだいたい半日、自由にレンタルできる)の権利を岡山のボーカリストユニット・SILVER TONEの皆さんにご購入いただき、今回取材記事を書かせていただきました!
SILVER TONEさんには、だっぴの応援ソングをつくってもらったり、だっぴのイベントにゲストとして参加してもらっていたり、様々なシーンでお世話になっています。
▼SILVER TONE Facebookページ
https://www.facebook.com/silvertonemusicandart/
今回取材させてもらったのは、「福島の今を伝える」というイベント。
福島のNPO法人シャロームさんとSILVER TONEさんとで、「福島の今と岡山をつなぐ委員会」を結成し、福島と岡山をつなぐ機会をつくっています。
この記事は、イベントのルポとSILVER TONEメンバーの小杉さんへの楽屋インタビューを織り交ぜながら、執筆しています!
両方ともお楽しみくださいませ!
【小杉さん】
タイトルにあるとおり、「福島の今を伝えること」を大切にしていました。
福島の現状がどのようになっているかということを、岡山の方は岡山に住んでいると情報が入ってこないから分からない。中には、「え、もう大丈夫なんだよね」って思っている人もいるし、どうなっているか知らない方もいるので。福島の今を正確に伝えることを大切にしていました。
(福島からの)避難者の方が「私たちがこういうイベントを主催することもできるけど、そうすると内々の集まりみたいになってしまうから、知っている人しか来れない。」とおっしゃっていて、私たちの強みは一見さんにもイベント来てもらえる集客力・宣伝力なんだと思いました。私たちが呼びかけることで来てもらえる人たちがいるので、その人たちに伝えられることがあります。
オープニングアクトは、三線アーティストhull(ハル)さん。素敵な楽曲から始まりました!
今年福島に足を運んだhullさん。「福島と岡山をつなぐ機会に自分も関われていることを嬉しく思う。長く、歌い継いでいきたい。」と話します。
続いては、トークセッション。
様々な立場から福島に関わる人たちの「あの時」と「今」を紐解いていきます。
トークセッション前半
前半の登壇者は、
大塚愛さん(岡山県議会議員、子ども未来・愛ネットワーク 代表)
佐藤真弓さん(HAPPYな選択を 代表)
土屋暢樹さん(福島原発岡山訴訟原告団 共同代表)
お三方とも、3.11をきっかけに移住。
土屋さんは福島から岡山に移住するために退社を会社に伝えたとき、他の社員は「どうしたの?(この地域は大丈夫だから)そこまで気にする必要ある?」という反応があったと言います。
現在、避難者100名と訴訟を起こされていて、「私たちがどういう権利を取り戻そうとしているか、知ってほしい」と裁判への傍聴も勧められていました。
佐藤さんは、年に2回ほど福島に帰る機会があります。土壌の放射線量は未だに高い値にあるようで、放射性物質の吸収抑制などの対策がとられているので食品として問題はないが、(とは言え)生活するには不安が残ると話します。
故郷に帰りたいが、そこに介在する不安から、三者三様に葛藤を抱えている事情がありました。その葛藤を、大塚さんは「天秤棒が折れてしまうくらいに、天秤にかけられないものだ」と表現されていました。
トークセッション後半
後半の登壇者は、
大塚愛さん(岡山県議会議員、子ども未来・愛ネットワーク 代表)
菅野久美子さん(一般社団法人ほっと岡山 事務局長)
橋本省吾さん(希望の牧場を支援する会)
菅野さんは、伊達市から関東を経由して玉野市に移住。ほっと岡山の事務局長として、移住者の立場から中長期で避難者の支援を行っています。橋本さんは岡山出身の立場から、被爆した牛と共に生きていく覚悟を決めた「希望の牧場」を支援しています。
避難者のお母さんの中には、「岡山だと自分のモヤモヤを吐き出すことができるが、(福島に帰ったとして)福島の人に同じことを話せられるか。」と、(周囲も同じ環境なだけに)自分だけ気にしているというレッテルを貼られることへの不安を感じている人もいると、菅野さんは語ります。
不安を解消できるコミュニティが岡山にあることが、とても重要なことだと感じました。
【小杉さん】
トークセッションには、今年初めて出られた方と昨年も出てもらった方がいました。
過去から現在、現在から未来の流れで話してくださったのが昨年でした。東日本大震災が起きる前どうしていたか、起きてどうしたか、そして、その未来の話。お子さん持たれている方が多かったので、福島に帰るか帰らないかというような話もしてもらいました。
今年も流れとしては昨年と同じようなことを決めてましたが、私が聞いていて思ったのは、それぞれの人の現在の状況だったり、今どういう活動をしているかを一人一人細かく話をしてもらった印象でした。裁判の傍聴に来てくださいとか、昨年はなかったトピックでした。
「裁判の傍聴に行ってみようかな」という方もいて、昨年よりも身近に感じてくれている方が増えた。そんな印象を受けました。
トークセッションが終わり、ステージチェンジの間に、リーダーの西山範彦さんが今回のイベントの経緯を話します。
西山さんたちは、笠岡ベイファームでNPO法人シャロームさんがつくっている「ひまわりプロジェクト」のひまわり油と出会いました。
ひまわりプロジェクトとは、シャロームさんがひまわりの種を全国に配り、各地で育ったひまわりの種を使って、ひまわり油をつくる取り組み。震災以前からシャロームさんが障害のある若者と農家さんたちと6次産業化させたひまわり油だが、3.11の土壌汚染によって生産・販売を断念せざるを得なくなってしまった。そんな中、県外の支援者の「来年からは種を送ってください。私たちがひまわりを栽培し、ひまわり油の原料としての種を送り返しましょう」という提案から、このプロジェクトが立ち上がった。
NPO法人シャローム ひまわりプロジェクト
http://www.nposhalom.net/himawariproject/
ひまわり油と出会った西山さんは「自分たちで(自分たちの強みを生かして)できることはないか」と思い、まだ岡山に伝わっていない福島の生の声を届けるべく、今回のようなイベントを開催するに至りました。
2年前から「ふるさとふくしま交流・相談支援事業」にも団体として採択され、大学生のボランティアスタッフなど、関わる人たちの円も広がっています。
続いては、SILVER TONEさんのライブパフォーマンス!
会場を、素敵な音色で包みます。
【小杉さん】
言葉を伝える力だと思います。
言葉をすごく大切にしています。
歌詞をつくるとき、みなさんから言葉をいただいて、よりその人たちの思いが伝わるように、募った言葉の中からチョイスして。
メロディーをつくるときも、この言葉はどんなメロディーだったら伝わりやすいんだろうということを考えながら、曲と歌詞をつくっています。作り手にそういう思いがあるので、聴いてくださる方も「こういう思いをもっているんだ」というのが歌で伝わりやすい。分かりやすく表現することを意識しています。
福島や南三陸で歌ったりするときに、泣きながら感想を言ってくれる方や「すごく伝わったよ」と言ってくださる方がいるので、そこを大事にしたい。
会話とかでは難しくても、曲にしたら伝わりやすい、分かりやすい。小さな子どもでも分かりやすい。歌は、そういうものであってほしい。
「どうやったら伝わるだろう」ということはずっと考えています。
ライブの間だけは、楽しんで、気分を楽にして、リラックスして、そして日常に戻っていってほしい。メンバーみんな、そうした思いで歌っています!
【小杉さん】
たまに聞かれます(笑)「実体験書いてるのに、『僕』ですよね」とか。
昔から『僕』なんです。何なんですかね(笑)
昔、個人でソロで(歌詞を)書いてたときって、失恋ソングや恋愛について書くことが多かったんですけど、恥ずかしいんでしょうね(笑)
『私』って言うと「あっ、この人のことか」という感じで見られちゃうから、『僕』にすることによって、“(私より少し遠い)誰かの話”くらいの感じで聞いて欲しいと思ったのかも。
『僕』にすることで、作り話のような印象をもってほしくて、無意識にやっていたのかも。それが慣れてしまって、今では何の迷いもなく『僕』が出るようになりました。
特にSILVER TONEの曲は、ほぼ『僕』かもしれません(笑)
NPO法人シャロームさんの活動として、福島の子どもたちが全国各地で「福島の今」を紹介するとともに「自分の体験」を語る『ひまわり大使ツアー』というものがあります。
今回も、ひまわり大使が4人、岡山に来てくれていました。
小学5年生の男の子は、東日本大震災のときは5才。
福島の様々な人たちの話を聞きながら、この8年でどのように復興してきたのか、その軌跡を知ったと言います。
高校2年生の女の子は、「福島は日本で一番安全だと思う。福島の本当の現状を伝えたい。復興は進んでいて、環境は取り戻しつつあるのに、人の心や風評被害のようなものは癒えていない部分もある。」と話します。
彼らが福島県庁を訪れた際、県の危機管理の担当者の方が「子どもたちに謝りたい」と言っていたことが印象に残っているという話もあり、僕自身も印象的な話の1つとして残っています。
自由交流の時間もあり、あっという間にエンディングへ。
終わりの言葉として、小杉さんが会場に思いを伝えました。
「僕たちはお金とか同情とか、そういうことよりも、忘れないでほしい。」
これは福島の方からいただいた言葉なんです。3.11が起きたということを伝えることによって、月並みですけど、風化させないようにしたい。
今日お話を聞いて、「まだまだ大変な状況の地域もある」ことを閉じないで伝えていってほしい。今後同じようなことが起こって、(必要以上に)かなしい思いをすることがないように、語り継いでいってほしい。
「日本国民のみなさんに3.11を忘れないでほしい」という思いが一番強いです。
「福島ってこういう状況なんだ」って思ったら、ちょっとは気に掛けると思うんです。例えば、3月11日が近づいたときに、「そういえば去年こういう状況だったけど、今どういう状況なのかな」とか。
知ろうとしなかったら、何も情報が入らないまま薄れていく。だから、今日みたいな機会に来て、知ってもらうことで(支援してほしいわけじゃなくて)遠く離れた地でも思い返すときがある。そんな思い返すきっかけをつくっていきたいです。
小杉さんは最後に「今後も震災支援の活動を続けていきたい」とおっしゃっていました。
会話や文章では伝えることが難しいものでも、歌だから伝えられることがある。
「SILVER TONE」が伝える「福島」だからこそ、特別な意味をもてる人たちがいるし、その人の“思い返しスイッチ”になる。
「SILVER TONE」 と「福島」のあいだにある、特別な力、見えないけど、たしかに“そこにあるもの”に触れて、僕も“思い返しスイッチ”をもらった気がします。
ご清覧、ありがとうございました!